鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。 ☆☆☆☆☆
ただ一言。
面白い!!!
これは今年のベスト5に入ってくる程に大好きな本になった。
タイトルからして秀逸ですが、目次も秀逸。
ぜひ書店にてこの本を手にとって確認して欲しい。なんだこれ?ってなるから。
タイトル通り鳥類学者の川上和人という方が書かれた、鳥類に関するお話で鳥類に関する知識も学べるのですが、とにかくボケが満載でツッコミながら読み事をオススメ!
といっても、何がボケでどう面白いのかがこれだけだと分からないと思うので、ここで2つほどオモシロ文章を紹介することにします。
夜の沖縄にはハブがいる。夜の海にはサメがいる。夜の中南米にはチュパカブラがいる。しかし、小笠原の無人島にはいずれもいない。夜間調査でも、比較的安全である。おかげで、私はあまりにも油断していた。
入念に油断を研ぎすませていた丑三つ時、突如として頭に暴力的な衝撃が走った。
この、『入念に油断を研ぎすませていた丑三つ時』というフレーズ!!ここ!これ大好き!入念に、油断を?、研ぎ澄ます??
普通なら集中をしているときに使用するようなフレーズに、油断という集中とは真反対の状態を当てはめるこのセンス、最高です。
ちなみに、何が起こったのかはぜひとも本を読んで下さい。ちょっと怖い話です。
さて、次は英語が苦手なことを若者の育成のためだと開き直る場面。
そんなに英語が苦手ならそろそろ英会話教室にでも通えばよいのにと思う浅はかな方もいるだろう。しかし、そういうわけにはいかない事情がある。私は後進の育成に貢献せねばならない立場なのだ。
世の中には優秀な研究者がたくさんいる。バンバン論文を書き、英語でジョークを交わしながら、ブロンズ淑女とハグをする。そんな先輩の姿を見たら学生はどう思うだろう。ダメだ、自分はああはなれないと研究生活を断念し、鳥学の世界から離れてしまうはずだ。若手が育たなければこの分野は廃れてしまう。
そこで私の出番だ。
あの人、普段は偉そうなのに英語全然ダメじゃん。不惑を過ぎてあんなでも何とかなるんだね。
学生は私の姿に希望を抱き、私を追い越して未来を担う人材となる。鳥学の将来は私の語学力にかかっているのだ。
若人よ、ここは私に任せて先に進みたまえ。
もしこの文章がツボに嵌ったのなら是非ともこの本の購入をするべし。
もちろん、こんな風なオモシロ話ばかりではなく、鳥に関しては真面目に解説をしていたり、外来種問題について考えたりもしている。
この真面目とボケの緩急が絶妙なさじ加減で素晴らしい。
お菓子のキョロちゃんでの検証思考は検証対象がキョロちゃんという可笑しいでしょっとなるものではあるものの、その検証自体はすごく理論的でこういう風に研究者って仮設を立てるのかと勉強にもなります。そしてそのオチも教訓付きで面白い。
確かな知識とそれをウェットに飛んだ言い回しで面白く話すことが出来る人は本当に頭が賢いんだろうなと思います。
この著者の別の本で『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』というのがあるらしいので、そっちも読んでみたいと思います。