ねこのひとみ

本や映画の内容を忘れないようにする

猫の瞳

「学力」の経済学 ☆☆☆☆

この本には一人の天才を育てる方法は書かれていません。天才を育てたい人は別の本を読むべきだと思います。(ただしどこかのだれかの子育て成功体験記を読んだとして天才を育てることが出来るかといえばNoといえるでしょう。そのこともこの本に書かれてあります。)

この本で語られているのは前半は子供を育てるときに気になる勉強について各家庭で実践できる方法の科学的根拠(エビデンス)に基づくアドバイス。後半は、地域の、ひいては国の子供達の学力の平均を底上げするための方法の提案であり、最終的には教育に科学的根拠(エビデンス)を用いて計画的に教育制度を整えてかなければならないということでした。

 

「どこかの誰かの成功体験や主観に基づく逸話ではなく。科学的娘に基づく教育を」

 

本書を読んで私がなるほどなと思ったことは、親の関心の高さが子供の学力に影響するということです。

まず、因果関係と相関関係の話があるのですが、これがとても面白かったです。

よくメディアで言われている、「学力が高い子供は読書をしている。だから、子供に読書をさせることが重要だ」という言葉。なるほど、読書をしているから賢くなるのかと納得している人が多いかと思いますが、これが実は因果関係ではなく相関関係というものであることが説明されていました。

そもそも因果関係とは「Aという原因によってBという結果が生じた」ことを意味します。そして相対関係は「AとBが同時に起こっている」ことを意味します。

つまり、本を読んでいるから学力があがるのでなく、学力が高い子がただ本を読んでいただけということです。本と学力に直接的な関係はないのだそうです。

さらに、「見せかけの相関」という「第3の要因」について言及しています。例えば、親が子供の教育への関心の高さがあげられています。親が子供に関心をもっていれば、勉強をしなさいと子供に促すでしょうし、同時に本も買い与えるかもしれない。その結果、学力が高くなる。この「子供への関心の高さ」が変化を引き出しているかもしらないのに、読書と学力の間に関係があるように見えてしまう。これを「見せかけの相関」というそうです。

こういった認識の誤りは読書と学力だけでなく、もっと身近にも存在してるようにも思います。はたまたそういった認識の誤りをわざと与えるものもありそうです。例えば女性雑誌で「この夏に彼氏ができた子たちはみんな赤い水着を着ていた。さああなたも赤い水着を着て彼氏をつくろう!」といったキャッチコピーがあったとします。これは全くの相関関係です。でも、彼氏を作るには赤い水着がいいのか、と誘導される人もいるでしょう。広告の分野ではこういった因果関係に見せかけた相対関係が多そうだなと思いました。ちょっと考えればわかることですが、意外とバイアスがかかって信じてしまうんですよね。ちなみに私は騙されるタイプでよく広告に踊らされてます。悔しいことに。笑

 

 この因果関係と相対関係は「テレビやゲームが子供に悪影響を当たえるのか」という問題にも活用されていました。「暴力的なゲームをすると子供の問題行動が顕在化されるのか」が因果関係。「もともと問題行動をするような子供が暴力的なゲームを好むのか」が相関関係とされ、そのどちらが可能性があるのか。

因果関係の実験では特にゲームが子供に負の影響を与えているとはでなかったそうです。むしろ、ストレス発散になったりロールプレイングでは創造性や忍耐性が養われたという結果もあるそうです。また、ゲームの時間がもったいないからと、親が子供にむりやりゲームをやめさせることがありますが、これも効果があるとは一概には言えないものでした。なぜなら、ゲームをやめさせたからといってその時間を勉強に費やすとは限らず、むしろネットやスマホの時間の取って代わるだけになるかもしれないからです。もし、子供に勉強をしてほしいのならば「勉強しなさい」と口の言うのではなく「子供の勉強を見る」や「勉強の時間を守らせる」など、親の時間をある程度犠牲にする方法が長い目で見ると効果があるそうです。

 

「本を読ませる」といった部分にも関わってきますが、結局は親がどれだけ子供に関心を持ち時子供を見ているかが子供の学力に影響があるのだろうと思います。

本書ではしつけも学力のうちと考えられているのですが、これも親がどれだけ子供を見ているのかが問題となる部分だと思います。他にも、いじめが発生した時に引っ越しして学校を変えるほうがよいだったり、結局は親が積極的に子供に関心を持って行動を起こすのか、これが子供の学力に最も影響があるのだなと思いました。