戦闘妖精・雪風<改> ☆☆☆☆
雪風
彼女に愛情を持つと同時に畏怖を感じる
戦闘妖精・雪風<改>:神林長平
読む前はあらすじから何か電子精霊的なものが出てきて一緒に戦うとかかなーと思ってたけども、全然違ってた。
そんなチープな設定ではなかった。
読んでいくうちに雪風が ”人” の様なものに感じていく。
でも、人ではない。機械に機械の心とでもいうのか、何かが宿っていると思える、ざらりとした質感がそこにはあった。
人の心ではなく、機械の心。
小説を読むにつれて雪風が好きになっていった、と同時に私は雪風が恐ろしい存在に感じた。
ブーメラン戦士達は合理的で非人間的であると何度も書かれていたが、雪風たち、地球型コンピュータに比べたら全然人間性があり、感情があるように思える。
機械には共感や他者を思いはばかるといった感情が存在せず、ただ合理的に行動をする。その合理的こそが非人間性なのか。
しかし、そうすると非人間性だと言われるブーメラン戦士たちも機械と同等になるが、そうは感じ無い。
何が人間性と非人間性の境界線となっているのか・・・。
読んでたときに感じたのを思い出すと、一種の恐怖というか畏怖感がブーメラン戦士(に限らず、登場人物全てに)ないかった。彼らは非人間的と言われつつもそれでも至って普通の人間だからだ。
しかし雪風にはそれを感じた。
では、その畏怖感はどこから発生したのか。
神を人間には認知できない。だからこそ畏怖を持つ。
同様に機械の心を人間には認知できない、理解できない。だからこそ畏怖感を感じるのではないだろうか。
でも、それと人間性とがどう関係するのか・・・・。
私のない頭ではこれ以上考えても埒が開かなそうだ・・・。
むしろ余計に混乱してきた。
とにかく、人間と機械の分け隔てるものは一体なんなのか、人間性とは、心とはといったことが問いかけられてるように思えた。(無理やり)
ーーーー話は変わって。
しかし、この小説は面白い。
そう感じる要因の一つとして、文章の書き方や構成が巧みだなと思う。
章のはじめに、4,5行の文章が書いてある。
その章の予告だけども、それが想像力をより高めてくる。
最終章では思わず、雪風私を置いて行かないでくれーっと心の中で叫んでしまった。
そして、飛行シーンや空中戦では戦闘の迫力や自在に飛ぶための重さと軽さがあった。金属の重み、重厚感がありつつも、飛ぶということの軽やかさが文章から滲み出てるというか。戦闘機の構造とか専門用語とか全然わからないけども、そこにリアリティがあるように感じる。
この小説ほど戦闘機の飛行の描写が重たいものと感じたのは今のところないかな。
(他にこれも描写が凄いっていう小説があればぜひ教えて欲しいです。読みたい。)
なにより、雪風はただの戦闘機(いや、全然そんじょそこらの戦闘機とは比べ物にならないけども)なのに、あそこまで魅力的に描けるのは文章力がしっかりしてるからじゃないかな。
あと、今回読んだのは<改>の方だったので元の小説と比較したサイトがあったのでそのURLも貼っつけとく。
http://homepage3.nifty.com/acts-labo/yukikaze/kaitomujirusi.htm
「むは」が読みたかった・・・・!笑