ニューヨークの魔法は続く ☆☆
ニューヨークのイメージとはどんなものでしょう?
私は繁華街をキャリアウーマンがヒールを鳴らしながら颯爽と歩き、ウォール街ではビジネスマンが忙しそうに商売のことを電話ではなし、自らの利益を考え続けるクールでどこか冷たい街。そしてブロードウェイでは華やかなミュージカルやショーが毎夜輝き、街自体が常に動き続けている。さらには社会の裏側では怪しい人物が路地裏にいたり、怪しい取引が行われ殺人も発生する。そこに颯爽と現われ事件を次々に解決していくFBI捜査官達ッ!と、海外ドラマの影響も多大にあるが、まぁ、私のニューヨークのイメージはそんな感じ。
でも、この本を読んで印象が変わった。
ニューヨークのような大都会にも温かい人達はいるんだなと。
この本は筆者がニューヨークで暮らすなかで体験したことが短いエピソードとしてたくさん描かれている。
その一つ一つのエピソードは些細であり短いセンテンスではあるけども、そのどれも温かみを感じるものばかり。
1つ電車の中でのエピソードをあげると、著者が車内で立っているとき急に大きく電車が揺れて思わずバランスを崩し、座っている男の人の膝に着地してしまう。その男性は「こりゃいいや」と笑い、乗客も笑顔で著者を見ている。著者はそんな状況が恥ずかしくて、何度も謝って膝から立つが、男性はユーモアたっぷりな言葉をいいながら席を譲ってくれるのだ。
恥ずかしいと思える場面で遠慮せずに笑ってむしろユーモアな言葉を返してくれるのはユニークさを感じるし、周りの乗客も微笑みながらその珍妙な状況を一緒に楽しんでいる感じがする。このエピソードだけどもニューヨークに対するイメージががらりと変わった。
ニューヨーカーは親切でいて陽気で愉快な人々でもあるんだと。
もちろん、良い面ばかりではない。
ホームレスが登場したり犯罪を犯した少年たちが罰則で駅のホームを掃除しているエピソードもある。
それでもそこには明るさや優しやユーモアがあった。厳しい境遇でも明るく笑って明日へと生きている人の姿があった。
恐らくそれは著者自身が暖かく優しい視線で世界を見ているからそういった人の部分が浮かび上がってくるんだろうなと思う。
なにより著者は好奇心旺盛にいろんな人に声をかけていたからこそこんな素敵なエピソードに遭遇することができたんだろう。
街で気になった人に勇気を出して声をかけてみると、著者のように素敵な人との出会いが待っているのかもしれないとかんがえると、少しワクワクしてきた。