ねこのひとみ

本や映画の内容を忘れないようにする

猫の瞳

カエアンの聖衣 ☆☆☆☆

「カエアンの聖衣」を読了。
アニメのキルラキルが好きだったので新訳版が出たので買ってみました。
そして、物語を読み終えた瞬間に、キルラキルが始まった感じがした。
かなり前向きに捉えるというか、服が仲間となったパターンが鮮血だ!って思った。この物語のラストはハッピーエンドともバッドエンドとも取れる。想像の余地が沢山ある。ペデルが持ち帰ったプロッシム植物をマストが発見して焼却してめでたしでもいいし、隠れて育ててスーツが完成し、そこれザイオード文明の崩壊の起点になるでもいい。終わったあとも想像できるのって楽しい。
 

 

アマラの傲慢さに振り回されるエストルーが個人的には好きなキャラだったからもうちょい活躍して欲しかったな。一歩引きながら物事を観察してる姿勢。というかアマラが強引だからエストルーがいっそう可哀想で良心的に見えてくる。特にそんなこともないんだけども、対比による効果なのかな。マストとアレクセイの友情ももうちょい掘り下げて描写シて欲しかった。ま、この物語はキャラクターを掘り下げる作品じゃないんけどもね。私の好みの問題だし最近キャラ物ばっかり読んでたからな。つい。
この物語で一番面白いのはやっぱり多岐にわたるアイデアだろうね。
主軸となるカエアンの服飾哲学、受動的な知性、インフラサウンド獣、スーツ機械にサイボーズ・ギャングのヤクーサ、ボンズ。いやもう、ヤクーサ・ボンズが出てきた瞬間笑っちゃったね。荒唐無稽さが素晴らしい!こういった自由なアイデアがSFの醍醐味だと思ってる。
 
キルラキルの脚本家の中島かずき氏のあとがきに書いてあった言葉で、ワイドスクリーン・バロックという言葉がある。「ハードSFが論理(ロジック)に重点を置き、文学的SFが文体(スタイル)に重点を置くところを、ワイドスクリーン・バロックは観念(アイデア)に重点を置くのである。」そしてカエアンの聖衣を書いたバウリントン・J・バイラー氏はワイドスクリーン・バロック作家だと。なるほどなー。
そうして、最後にあとがきを読み終えて私が一番びっくりしたのは、「時間衝突」の著者もこの方であったとうこと。5年ほど前にタイトルに惹かれて読んだんだけども、著者名忘れてたから驚いた笑 
時間衝突もワイドスクリーン・バロックだったなぁとあとがきを読んで思いました。わたし、この著者の作風、好きなんだろうな。