ねこのひとみ

本や映画の内容を忘れないようにする

猫の瞳

ヒュレーの海 ☆☆☆

なろう小説家がハヤカワ文庫で作家デビューしたというので気になって読んでみました。

 

読んで20〜30ページぐらいまでの印象が、これまでの既存の作品の言葉とか世界観設定を組み替えてるだけだなあといった感じ。地上都市(トップ)が資本家階級で地下都市(ボトム)が労働者階級という階層によって格差があったりってよく見る設定だよね。しかも、その資本家階級と労働者階級の人達が全く出てこないというか、資本家階級と説明した直後に技術集団が世界を握ってるって説明があって、資本家がトップじゃないのかい!と一人ツッコミしてました。こういった小さいツッコミ要素が何個かあって読んでる時に気になったんだよなぁ。

なにより、文体はハードSFちっくなんだけども、登場するキャラクターがラノベやアニメ独特のテンションと言い回しで違和感。ラノベもアニメも好きなんだけどもなんか受け付けないんだよなぁ・・・・等々グチグチ思いながら読み進める。

 

でも、次第に読んでいくうちに、なにこれすごーおもしろー!ってなった。笑

世界を現実のプログラミングに当てはめた様な設定の説明あたりから本領発揮って感じで面白い。ただし私がプログラミングやらコンピューターの知識がないから全くもって何を行っているのかは分からない!ポインタってなんだよ!?『組(クラス)と構造体(ストラクト)みたいな抽象対象(アブストラクト)だけだと、宣言定義だけで関数(ファンクション)とかライブラリの処理内容が確認できないから・・やっぱり具体対象(インスタンス)がないと厳しいね』ってさっぱり意味がわからない!プログラミングの知識があれば理解できるんだろうなってことぐらいしか察せれない。

でもこのゴリゴリ押していく感じ、好きです。

 

そして主人公たちの「海を見る」という目的のための手段として魂の創造(ゴースト・プログラミング)をするだと!?それって現実世界に置き換えたら人工知性体を作るってことだよね??サイコー!ここからどういう思考実験がみれるのかなな〜〜っと思っていました。

結論から言えば、それはなかったです。そこは自然発生した知性体がロボットへインストールで終了でした。残念。

 

ただ、その後も見事なゴリゴリな勢いがあってどんどん読めました。ぶっちゃけ専門用語は意味不明でも展開がアニメとかラノベ的なノリなのでストーリーの大雑把な流れ自体は分かりやすくて助かった。私の、知能が、残念。

 

ラストはちょっと尻窄みだし、多分ラノベみたいに連作として考えられてそうな感じなので、売れたら続編がでたりするのかな?

 

いやあ、しかしこの感想文を書くためにパラパラとページを捲り直してるんだけども、回りくどい言い回しとか盛り上げる時の文章が”なろう”の雰囲気があるな〜。

”なろう”に限らず今はこういった文体が主流なんだろうね。

 

ちなみに、なろうは十年ぐらい前から漁ってる古参です。笑